義父とコーヒー(でがらし)

義父母の朝は早く、

それよりも、

ヤーコン夫が早起きで、

それよりも、

チビヤーコンが一番早く、

チビヤーコンは

大阪のテレビ番組が

毎朝の楽しみらしい。

 

一番、遅く起きてしまう私は、

毎朝、

おそようございます」

の挨拶で始まります。

 

いつも、やさしく、

おそよう!おそよう!

という気持ちで、

迎えてくれる義父母。

 

ある朝、一男さん(義父)が、

コーヒーを飲んでいたので、

 

「わたしも、コーヒー、

いただけますか?」

と、一男さんに聞くと、

 

「あるよ!このコーヒー豆、

あと1杯は、でるよ~」

小鳥のさえづりをかき消す

朝も変わらずの

でかい声の一男さん。

 

見ると、

ドリップのコーヒーを淹れて、

そのでがらしで、

もう1杯、淹れれるという意味。

 

一男さんは、

毎回、同じコーヒー豆を

再利用して2杯飲んでいると。

 

「えー、それですか・・・」

あからさまに、

渋い顔をするヤーコン。

 

「なんで~?!十分、いけるよ!」

と、冬眠中のもぐらも

目覚める大きな声の一男さん。

 

えー!薄いじゃん!

いや、そういう問題じゃなくて、

おいしくないじゃん!

と思っていると、

 

それを聞いていたヤーコン夫が、

「そんなもん、

カラダに悪いだけや」

と、ぴしゃり。

 

一男さんは、少ししょんぼり。

 

このやりとりを聞いていた義母が、

「あーーーーはははは!

よく言ってくれたわ~!

わたしもな、毎朝、

そう思ってたんやけどな、

わたしが言うと、

この人(一男)、不機嫌になるからな、

黙っててん。

そやろ!だめやろ~、あははは!」

 

と、こんな嬉しそうに話す義母から、

普段の我慢の様子が伝ってくる。

 

やや調子にのっている

義母とは対照的に、

ますますしょんぼりする一男さんは、

来年80歳。

 

その日は、滋賀にお墓参り。

向かう車中で、

一男さんが、たまに行くという

茶店の前を通ると、

 

一男さん

「最近は、

コンビニのコーヒーが美味しいとか

言われているけれども!

※語尾が強いのも一男さんの特徴です。

 

わしな、やっぱり、喫茶店

コーヒーが美味しいと思うねん。

 

わしは、コンビニのコーヒーは

飲まへん!合わないねん!

と、力説

 

天使が通ったのか、

それぞれおのおの

何か思っていたのか、

数秒、しずまりかえる車中。

 

すると、絶妙なタイミングで、

 

「でがらしのコーヒーを再利用して

いける!っていう人が言っても、

説得力ないねん。

むしろ、

コンビニのコーヒーがうまいって

ことになるわ。」とヤーコン夫。

 

義母が、また嬉しそうに、

あははははははーー!と

ペーパー師匠のパーのような

高らかな声で笑う車中。

 

一男さん

「でも、父さんは

コンビニの味は合わんねん。」

と、でかい声が売りの

一男さんなのに、

蚊の鳴くような声で、ポツリ。

 

この日は、コーヒーのくだりで

一男さんは、2度、落ち込み、

義母は、2度、大喜び。

 

2人は、今年で結婚50年目。

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汝(なんじ)は、健やかなるときも、

喜びのときも、悲しみのときも、

共に助け合い、その命ある限り真心を

尽くすことを誓いますか? 

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でがらしコーヒー事件のような日も

ありますが、

全体的には幸せそうで何より。

50周年、おめでとうございます。

 

ヤーコンは、コンビニコーヒー

愛することを誓います。