早池峰山 臆病おばさんが登山から学んだこと

先日、道に咲いているツツジの花がきれいだったので、写真をパシャパシャ。そして、その写真を友人に見せる自分を客観的にみて、おばさんになったことを自覚。新たな人生の幕開けの音がしました。

おばさんの扉を開けた私は、2019年7月10日、早池峰山岩手県)に行ってきました。早池峰山は、高山植物の宝庫として全国に知られる花の名山で、県内外からの登山者でにぎわっています。標高1300メートル以上の高山植物帯は特別天然記念物に指定されている国立公園です。

f:id:dragon0206:20190712142323j:plain

今回、夫が早池峰山を登るというので、好奇心で私も登りたくなり「連れてって!」と言うと、夫は「まぁいいけど、こっちが誘ったわけじゃないから、自分の意思をもって登ってください」と淡々と言う。

私は、好奇心が旺盛なわりには臆病者。しかも登山経験の多い夫に比べて、私は、登山を今年はじめたばかりの初心者の登山おばさん。その割に、経験者である夫の登山指導に口答えをするやっかいなやつだと、夫は思っている。

「登山についてくるのは構わないが、口答えしないこと、素直に登山の心得に従うという条件をのむなら、来てもいい」と夫が言う。つまりは、甘えるなよ!という意味が込められています。

登山初心者おばさんの私は、その条件をのんで一緒に行くとにしました。

蛇紋岩(じゃもんがん)で有名な早池峰山。蛇紋岩は、岩石の表面に蛇のような紋様が見られることから命名され、2016年5月10日に日本地質学会によって「岩手県の岩石」に選定されたそうです。

f:id:dragon0206:20190712142526j:plain

河原坊にある駐車場に車を停めました。本当は、小田越という登山口から登ったほうが、約30分ほど時間を節約できるのですが、小田越の駐車場は、車が数台分しかないとのこと。早朝に到着すれば、駐車できるかもしれないが、私たちが到着したのは9時。

小田越駐車スペースは、すでに満車であろうと思い、河原坊に駐車して、小田越までの舗装された道路を30分歩きました。小田越駐車スペースは、実際に満車でした。

※土日は混雑するため、マイカー規制がされており、岳~江繋間に運行されるシャトルバスがあります。

登山前に、携帯用トイレを購入。

f:id:dragon0206:20190712143721j:plain

1個400円、3個で1000円です。

f:id:dragon0206:20190712142310j:plain

登山者は、自分の痕跡を残さないことが掟。ラーメンの汁やゴミはもちろん、汚物も持ち帰るのが鉄則です。

f:id:dragon0206:20190712144249j:plain

9時に河原坊を出発、2.5km歩いて、9時30分頃に小田越に到着。河原坊から小田越は、山道ではなくコンクリートの道路です。この小田越から山頂まで山道を約2時間歩きます。最初は、木に囲まれながら、岩を歩き、気持ちよかったのですが、、、

f:id:dragon0206:20190712142348j:plain

十数分後、木はなくなり、岩場地帯、視界は空!の状態に入りました。

人間、囲まれているという状態は安心感がありますが、視界が空の状態で、むきだしの状態になると怖さが増します。

f:id:dragon0206:20190716081602j:plain

なんといいますか、ロッククライミングのような気分になり、足を踏み外すと、落ちる!けがする!という不安が、簡単にイメージできてしまいます。足がガクガク、木で囲まれているときは感じなかった恐怖がわきあがります。

(※登山初心者の臆病おばさんなので、ロッククライミング的な気分になりましたが、早池峰山はロッククライミングではありません)。

さらには、帰りの大変さも不安までイメージして、下山するときに、またここを通るのか、怪我してしまうかもと、いろんな想像から、これ以上の登山は、私には無理だと思い、一歩がでません。

「わ、わ、わたし、、ここで帰ります」と夫に伝えると、

「は??大丈夫だ、一歩一歩進めば大丈夫だから」と夫。面倒なやつだ、という雰囲気が伝わってきます。

「いや、帰りのことを考えると、無理だ。怪我せず帰りたいので、この辺で引き返して帰ります・・・」と震える私。

夫は「はいはい、帰りのことは考えない。いまここに集中。マインドフルネスだ。ナウアンドヒア!」と、なぜか英語を淡々を使う夫。でもなぜか、ナウ アンド ヒア!= now and here!が響く私。

夫は続けて「少しだけ前をみて、そこまでの足場を考えて一歩一歩登る、その繰り返し。いまをしっかり歩けば、怪我はしない。まだ見えていない未来を妄想して、いまをしっかり歩かないと怪我をする」と。

そうか・・・でもこわい、と、足がすくんで、なかなか一歩がでない。そんな私の横を、60代後半のおばさんが、カメラをもってすいすいと進んでいく。しかも「わたしはね、ハヤチネウスユキソウを撮りにきたのよ~」と笑顔で。

このロッククライミング的な登山できる人は、体力があって若い人だと思っていたが・・・。60代の先輩おばさんが楽しそうに登っている。その姿に勇気をもらった40代おばさんの私は、ナウアンドヒアの精神でやってみよう!と、足がぶるぶる震えながらも、とにかく一歩、一歩進んでみました。もう登山は今日限りにしようと思いながら・・・。

ナウアンドヒア、ナウアンドヒア、ナウアンドヒアと言いながら登っていると、夫が、

「ほら、後ろみてごらん、隣の山がきれいだよ~」と私に後ろをむけというのですが、いやいや、こわいこわい、みれないみれない。この大自然が、私には広すぎて、高すぎて、こわすぎて、楽しむ余裕がない。ひたすら、now and here,now and here,と心でつぶやきながら登り続けました。

少しづつ傾斜が穏やかになって、足元にも余裕ができたなぁと思うようになったとことで、勇気をだして、後ろを振り向くと、ひゃーーーー!!!!!さっきまで、目線の上にあった隣の山”薬師岳”が目線の下に。コツコツと登ってきた結果、高いと思っていた隣の山をいつの間にか越していたのです。写真ではわかりづらいのですが、越えてます(゚ω゚)

f:id:dragon0206:20190712152921j:plain

コツコツって大事なんだと思いました。人生も同じだ。未来ばっかり不安に思って、怖がるのではなく、とにかく一歩一歩進み続ける。now and here。それを続けていくうちに、新しい景色が広がるんだ!と。

それを、夫に伝えると「そういうのは、いまはいいから、いまはいまを楽しめばいい」と淡々返される臆病おばさん。

そこから、またコツコツと歩き始め、↓少し余裕がでたので、写真を撮ることができました。

f:id:dragon0206:20190712142636j:plain

花を愛でる余裕もでてきました。これが、ハヤチネウスユキソウです。

f:id:dragon0206:20190712142356j:plain

ブーンとハチも飛んできます。

f:id:dragon0206:20190712142422j:plain

はじめてみたヒカリゴケ。

f:id:dragon0206:20190712142444j:plain

穏やかな道が広がり、心も穏やかになります。

f:id:dragon0206:20190712142336j:plain

あのハシゴまでは・・・

f:id:dragon0206:20190712142435j:plain

あと30分くらいで、山頂!というときに、難関のはしごポイントがやってきました。絶壁の石にあるハシゴの難関が!

これを見た瞬間、これは本当に無理!絶壁・・・、怪我する、こわい。これ登ったら、帰りもまた使わなくてはいけない・・・。絶壁のこの石をはしごで登り降りするなんて無理・・・。と足ががくがく震え、一歩がでません。

同時に、世界の山を登るイモトがすごい、、と、イモトはすごいと改めて尊敬。

帰りたいと思ったが、ここで引き戻ったら、これからの人生、何かあるたびに、引き戻してしまうよ!臆病おばさんよ!

わたしにはできる!さっきのナウアンドヒアの精神でやればできるんだ!チャレンジする人生を選べよ!心の中で自分を励まし、足をブルブルさせながら、一歩づつハシゴを登りました。

f:id:dragon0206:20190716081620j:plain

登ったあとも足が震え続けました。登山は今日限りでおしまいにしよう・・・と思いながら、ハシゴをやっとの思いで登りきりました。

すると、60代のおばさんが、えっこらさ、よっこらさ、とさくさくとハシゴを登ってきました。友だちらしき人に、私の写真撮ってぇ!なんていながら!なんという勇気!尊敬のひとこと。こんなおばさんにわたしもなりたいと思いました。

山頂まで、あと0.4km!!!

f:id:dragon0206:20190712142504j:plain

ここから山頂までは、ほとんど傾斜もなく、近隣の山を眺めながら、マツや花を愛でながら、ゆっくり歩きます。

f:id:dragon0206:20190712161404j:plain

1900mの標高で、生い茂るマツの生命力よ。

f:id:dragon0206:20190712142608j:plain

f:id:dragon0206:20190712142617j:plain

岩に隠れて咲く花がいました。自宅に戻り調べてみると、岩陰に咲くナンブイヌナズナという花でした。凛としていて、かわいくて、強さも感じます。

f:id:dragon0206:20190712160618j:plain

あの煙はなに?と夫にきくと、燻しげな顔をして、あれは雲だから・・・と。あ、そうか!あれは雲か!小学生からやり直したほうがいい、私。思えば高くに来たもんだ!

f:id:dragon0206:20190712142513j:plain

一歩一歩と登ってきて、12時10分、1913mの早池峰山の頂上に着きました!

f:id:dragon0206:20190712162250j:plain

山頂で、夫に何枚か写真を撮ってもらいました。その写真があまりに老けていて、自分のおばさん加減にがっかりしていると、

夫が「もう、おばさんだと認めたほうが楽になるよ、だって、おばさんなんだから」と。罪を認めたほうが楽になるよ、と諭す刑事のような夫。わ、わたしがやりました。

f:id:dragon0206:20190712162116p:plain
早池峰山の山頂は広く展望がいいです。へとへとになりながら、昼食をとっている私の横で、団体で登山していた60代~70代のみなさんもワイワイと昼食をとっていました。

その中の3人の女性は、昼食を終えると「さて!携帯トイレ試してくるか!せっかくだから、チャレンジしないとな、あはははー」と。まあ元気!!山頂でチャレンジするという精神!尊敬の一言です。

また、ほかの60代の男性が、団体の輪を乱した参加者に苦言を呈していたり、それをフォローする方がいたり・・・、口げんかか始まったり・・・。

シニア世代よ!疲労ないんかい!!!山頂で口論ができるシニア世代のエネルギーたるや!!!ますます尊敬!早池峰山とシニア世代からエネルギーをもらうの巻です。

山頂で口論できるエネルギッシュさがほしいぜよ。

f:id:dragon0206:20190712161259j:plain

昼食を終え、シニア世代に何度も追い越されながらも、私はゆっくりとゆっくりと降りて、無事に下山。普段使っていない全身の筋肉が悲鳴をあげている、いやむしろ喜んでいるのか!

登山は今日限りだと思った登山初心者臆病おばさんの私ですが、登山の爽快感がすばらしく、今度はどの山を登ろうかな!と思っている自分がいました。

 

早池峰登山を経験して学んだ、now  and  here!いまここに集中!

 

人生にも、臆病になりがちな私ですが、見えない未来に不安を抱くのではなく、now  and  hereの精神で、いまやるべきことをコツコツを積み重ねることをやっていこうと思った早池峰山登山でした。

f:id:dragon0206:20190712162406j:plain

私が下山しているときに、もう午後なのに登ってきた50代前後の男性がいました。「いやー、あまりにもいい天気だからさ、これは早池峰山が最高だろうと思ってよ、百姓の仕事は明日にまわして、きたんだよー」と。天気で自分の行動を決める人生って、かっこいいぜぃ!