「レディース&ジェントルマン」から「エブリワンへ」へ

20年以上前、ロンドンで英語を勉強しようと語学学校に申し込んだ。少し緊張しながら出席した初日、鼻歌とともにクラスに入ってきた女性の先生は「はじめまして~、ステファニーです(仮名)。ちなみに、わたしはレズビアンです」と、とても明るくハキハキと英語で挨拶をして、知的ユーモアあふれる楽しい授業だった。

翌日、とてもオシャレな男性の先生が「はじめまして、ジョンです(仮名)。わたしは、ゲイです」と穏やかな口調で挨拶をして、優しさあふれる授業をしてくれた。

こんな風に挨拶をするのは、珍しいかもしれないが、なぜか、私の英語の先生は2人とも、はじめての自己紹介で明らかにした。その意図は分からないし、意図などないかもしれないが、世間をまだまだ知らなかった私にとっては、カルチャーショックとともに多様性に触れ、ロンドンという街にますます知りたいと思った。

私は、英語を上達させるために日記を書き始め、ステファニーに添削をしてもらえないかとお願いすると、OK!OK!と明るく受け入れてくれた。業務外の仕事にも関わらず、毎回、丁寧に赤字で添削をしてくれ、細かく指摘をしてくれた。その頃の私は、生きるとは何か、みたいな思考で悶々としており、そんな内容であふれた日記に対して、ステファニーは、いつもブラックユーモアを交えたコメントや感想まで書いてくれ、交換日記のようだった。そのおかげもあり?ブラックユーモアの発想力が、英語よりも上達したと思う。

2017年にニューヨークの地下鉄アナウンスが「グッドモーニング、レディース&ジェントルマン」の言葉が「グッドモーニング、エブリワン」に置き換わったという。

www.huffingtonpost.jp

この変更に関して、行き過ぎているという人々もいたらしいが、行き過ぎているなんて、わたしは全く思わない。むしろ、いままで「レディース&ジェントルマン」という言葉に、何の疑問をもたなかった自分に反省をした。

LGBT運動団体のストーンウォール氏は、今回のアナウンス変更について、

「この言葉は、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーのコミュニティにとって非常に重要です。私たちにとって社会に受け入れられていると感じられるものです」というコメントが記事の中にあった。

「レディース&ジェントルマン」から「エブリワン」と、たった一言、言葉を変えるだけで変わる世界がある。